計算資源というと、CPUやGPUのような文字通りのマシンパワーを思い浮かべる人が多いと思う。
でも、今の時代に使える計算資源はそれだけではない。
たとえばAIのチャットサービスもそうだし、もっと広く言えば「思考を外部に逃がして処理してもらう仕組み」全体が、計算資源と呼べる。
今回はその中でも、他人を巻き込まずに使える計算資源について考えたい。
人間にとっての自転車としての計算資源
スティーブ・ジョブズが、コンピュータを「人間の思考にとっての自転車」だと捉えていた、という有名な話がある。
細かい数字はさておき、言いたいことは直感的にわかる。
人間はそのままだとそこまで高性能ではない。
歩けば疲れるし、考え続ければすぐに頭が散らかる。
でも、自転車に乗れば移動能力が大きく拡張されるように、コンピュータやAIを使えば思考の処理能力も拡張できる。
要するに、生身のまま頑張ることだけが知的活動ではないということだ。
道具を使って思考すること自体が、人間の強さでもある。
では、計算資源を「思考の自転車」として使うとは、具体的にどういうことなのか。
結論:日記やメモを残して、自分専用の思考環境を育てる
自分の中では、かなり有効なのがこれだと思っている。
日記を書く。メモを残す。考えたことを蓄積する。
そして、その蓄積を前提にAIと対話する。
最近は、AIに定型的な指示や前提知識を渡して使うやり方がかなり一般化してきた。
コード開発の文脈では、Skillsのように「こういうときはこの方針で動いてほしい」という知識を外部化しておく考え方がある。
これは別にコードの世界だけの話ではない。
人間相手にも応用できる。
たとえば、
- 自分が何にストレスを感じやすいのか
- どういうときに調子が良いのか
- 何を大事にしていて、何を軽視しがちなのか
- 過去にどんな判断で失敗したのか
こういう情報をメモとして残しておく。
するとAIは、単なる一般論生成機ではなく、自分という人間をある程度踏まえた壁打ち相手になっていく。
ここで重要なのは、AIに答えを丸投げすることではない。
むしろ逆で、自分の思考の材料を増やし、整理し、掘り下げるために使うことだ。
このやり方の利点
この手法の良いところは、蓄積がそのまま資産になることだ。
自転車そのものの性能進化は比較的ゆるやかでも、AIの進化はかなり速い。
つまり、今残しているメモや日記は、未来のより高性能なAIから見れば、さらに価値の高い材料になる可能性がある。
しかも、自分のメモが増えるほど、AIはより自分に合った形で思考を補助しやすくなる。
モデル自体の性能向上と、自分側の記録の蓄積。この二つが効いて、思考の自転車としての性能が複利的に上がっていく。
ここが面白い。
普通、メモは書いた瞬間がピークで、あとから見返さないまま埋もれがちだ。
でもAIがあると、過去のメモが再利用されやすくなる。
すると、書き散らかした断片が、あとで思考の材料として復活する。
目指したいのは、思考の深化ではなく行動の変化
ただ、考えるだけでは足りない。
計算資源を使って目指したいのは、思考を深めることそのものではなく、
現実の行動を変えることだと思う。
- 自分に向いていない選択を減らす
- 納得感のある意思決定を増やす
- 迷いで止まる時間を減らす
- 幸せにつながりやすい行動を、少しずつ選びやすくする
AIやメモの蓄積は、そのための補助輪として使うのがちょうどいい。
自分らしさを見つめ直し、現実に働きかける。
その結果として、自分の幸せに対して期待値の高い行動を取りやすくなる。
計算資源を使う意味は、たぶんそこにある。

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